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2011年3月 2日 (水)

卒業式のホームルームで語ったこと

卒業式のホームルームでは学級通信に書いたメッセージを読ませていただきました。

保護者の皆様へ 

 本日は保護者の皆様にとりましても、卒業式ですね。お子様のこと、まだまだ心配が絶えないかとは思いますが、高校を卒業するこれからは、半ば「社会人」となり、いよいよ皆様のもとから精神的に巣立っていくことと思います。
小学校・中学校・高校という枠組みの中での「学校生活」を卒業し、自分で学びの分野を選択し、自主的に勉学を究め、責任ある行動が求められるようになります。そのような意味から、皆様におかれましても、本日は、「卒業式」になるかと思うのです。
立派に成長し、高校卒業の時を迎えたお子様の立派な姿をご覧になり、いかが思われますか?覚えていますか?この子たちを授かったことが分かったあの日の喜びを。覚えていますか?初めて抱いたこの子たちの温もりを。覚えていますか?夜泣きがひどくて、なかなか眠らなかったあの夜のことを。覚えていますか?高熱を出し、心配しながら病院に連れて行ったあの日のことを。覚えていますか?予防接種を受けるのを恐がり泣いていたあの日のことを。覚えていますか?歯茎から永久歯が顔を出したのに気づいたあの朝のことを。覚えていますか?初めて背負ったランドセルが大きく感じ、「大丈夫なのか?」と気がかりになったあの日のことを。
私にはこの春、幼稚園を卒園し、小学校に入学する娘がいます。娘と共に歩んできた6年半の日々。その中には、実に様々なシーンがあります。中でも、この3年間で味わったシーン、そのたびごとに、「1組のみんなと保護者の皆様の間にもこのようなシーンがあったんだろうな。そのとき、保護者の皆様は、どんな思いになったのだろう」と思いを巡らしてきたものです。
振り返ってみますと、皆様それぞれに、忘れられないシーンや感慨があることと思います。18年間もの長い年月の中での子育て、本当にお疲れ様でした。私は皆様のことを、6歳になる娘の父親として、心から尊敬します。この教室にいる誰もが思いやりのある子たちです。周囲の人々の気持ちを考えて行動できる子たちです。しっかりとした意志があり、地道に努力できる子たちです。おごり高ぶることなく、謙虚に自分の力や資質を理解し、行動できる子たちです。
過大評価だと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。無理もありません。子どもたちはまだ、親への「甘え」や「照れ」のようなものがある成長過程にありますから、特に、親に対しては「子どものまま」の振る舞いをしているかもしれません。我が儘なことを言ったり、ろくに返事をしなかったりという場合もあるかと思います。それは、親である皆様にだけしかできない「甘え」なのだと思います。
お子様は立派に成長してきました。担任である私の前ではもちろん、学校生活全体において、きちんとした社会的な振る舞いができる子たちです。自信をもって社会に送り出すことができる子たちです。私を気遣ってくれもします。「いつも、ありがとうございます」「忙しいところ、すみません」「今、お時間、大丈夫ですか」。ちゃんと相手の立場に立って行動できます。これらは、18年間かけて注がれた皆様の「愛情」に裏打ちされたものであると確信しています。
また、私との二者面談の中では、皆様に対する感謝の気持ちを示してくる子も実に多かったのです。このことも覚えておいていただきたいと思います。「親に迷惑をかけたくない」「親も心配してくれている」「親が○○だと言ってくれたんです」など。そのような場面に出くわすたびに、「私も皆様のような親になりたい」という思いを強くました。
私は、もしかすると、相当幸せな存在なのかもしれません。「愛情」に裏打ちされたこの子たちのきちんとした行動を一番先に、しかも、一番近くで見られたのですから。皆様がそれを実感できるのは、この子たちの親に対する「甘え」や「照れ」が完全に消える頃でしょうから、もう少し時間がかかるかもしれません。
さて、担任として、一生懸命に取り組んで参りましたが、至らないところがたくさんあったはずです。どうぞ、おゆるしください。そのような中でも、本校の教育活動に対しまして、ご理解とご協力を賜り、ありがとうございました。そして、こんなにも素敵な子たちに巡り合わせてくださり、本当にありがとうございました。

私の大切な教え子たちへ 

 2011年3月1日。今日は卒業の日ですね。この教室で、みんなの前で話をするの、これが最後になりますね。学校があって教室がある。教室には生徒のみんながいて、担任の私がいる。生徒のみんなは、毎朝、教室のドアを開け入ってくる私の表情を確認する。そして今日1日がどんな1日になるのか予想する。そして、同じ空間、同じ時間を共有する。何でもない毎日、当たり前に過ごしてきた毎日が、今では手の届かないところに遠のいてしまった宝物のように感じます。今、こうして同じ空間と時間を共有していますが、これが最後なんですよね。そう考えただけで、胸の中がぎゅっと締めつけられそうです。これが最後の話になるのだから、私は真剣に語りたいと思います。どうか、心に刻んでください。
 リアクションが多く、個性豊かでとても明るいクラス。話を真剣に聞いてくれて、受け止めてくれる。たくさんのリアクションの中で、みんなを笑わせながら、されど、真剣勝負で授業ができたこと、とても嬉しく思っています。そして、みんなの青春時代の貴重な3年間を傍らで応援させていただけたこと、感謝しています。
 「みんなが、私と出会えたことは本当に良かったことなのか。私で良かったのか…」。
 3年間の日々の中で何度も自分に問いかけてきたフレーズです。私が新人の担任だった頃、学園祭が終わった後、クラスのみんなと馬鹿騒ぎをして、上司にこっぴどく怒られたことがありました。学校に焼きいも屋の車を呼んで、これまた怒られたことがありました。みんなと、新人時代の私が出会っていたら、どうなっていただろう。「出会ってみたかった」という思いがあります。
 同時に、私が50代後半になったときに出会ってもみたかったと思います。この頃になれば、人生の中で様々なことを経験し、その教訓をたくさんみんなに語ることができたかもしれません。ことばにも深みが出ていたはずですし、すぐに熱くならずに諭すようなアドバイスができたはずですから。
 しかし、それらは反実仮想の世界です。現実は、30代前半の私とみんなが運命的にこの学校で出会ったということ。半人前の私の姿やことばから、一つでも二つでも、何でも良いのでつかみ取ってくれたのなら幸いです。
 先日読んだ本にこんなことが書かれていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小才は縁に出会って縁に気づかず、
中才は縁に気づいて縁を生かさず、
大才は袖すり会うた縁をも生かす   (柳生石舟齋)
 世の中には縁があるにもかかわらず縁を生かせない人、縁に気づかない人がたくさんいる一方で、わずかな縁を生かせる人もいる、という意味です。出会いは人の人生を変えます。人の歓びで最もすばらしいのは、よい人とのご縁ではないか、私はそう思っています。よい縁はさらによい縁生み出します。よい縁をつくるためには、和み、謙虚さと感謝の気持ちが大切です。縁を大事に思う気持ちが、縁となり、つながっていくのですから。
『空の上で本当にあった心温まる物語』より 
三枝枝里子 著 
あさ出版(2010年10月発行)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 人は人の影響を受けて成長していくものです。どうか、これからも人との関わり、人との出会いを大切にしていってください。これまで出会った人々との絆を大切にするとともに、これから出会う人々との絆も構築していってください。
ところで、人生は良いことばかりではありません。いやなこと、辛いこと、苦しいこと、それが全体の多くを占めているのではないでしょうか。いやなこと、辛いこと、苦しいことに出くわしたとき、何かに躓いたとき、どうか、空を眺めてみてください。
この空は繋がっています。
この学校で出会った友だちと繋がっています。
大切な人たちと繋がっています。
そして、私たちとも繋がっています。
空を眺めながら、この高校で過ごした日々、思い出してみてください。きっと、未来へのヒントが隠されているはずですから。同じ空の下で、それぞれ、頑張っていきましょう。
それから最後に宿題です。それは「親への感謝、家族への感謝の気持ちを忘れないこと」です。この年頃だから、親への反発があるかもしれません。親の意見を素直に受け入れることができないこともあるでしょう。私もそうでした。恥ずかしながら、子どもが生まれ、成長を見ていく中で、やっと、「親はどれだけ子どものことを心配しているか」が分かってきました。自分の力で生活できるようになってからで良いですから、たくさん親孝行、家族孝行してください。それが、18年間育ててもらい、高校卒業の日を迎えられたことに対する恩返しになりますから。絶対、忘れないでください。
まだまだ、語りたいことがありますが、そろそろまとめます。
卒業、おめでとう!
人との出会い大切にし、豊かな人生を歩んでください!
辛くなったら空を眺めてください!空はみんなと繋がっていますから。
同じ空の下で、みんな懸命に生きているのですから。
私は、毎朝空を見て、「今日も1日、みんなが素敵な1日を過ごせますように」と願い続けていきます!
たくさん親孝行、家族孝行してください!
私のことも忘れないで!
私は、大好きなみんなこと、絶対忘れないから!
今まで本当にありがとう!
卒業おめでとう!
じゃあ、また会いましょう!
さようなら!
――2011年3月1日 卒業の朝に―― 

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コメント

>ゆうちさん
 年月の流れははやいですよね。あれから3年。君も4月から大学4年生になるんだから。君との卒業を間近に控えていた頃のやりとり、今もしっかり覚えています。

「この高校は自分を見つめ直せる原点」とは、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。そういう言葉、本当に嬉しい。

大学生活も後半にさしかかってきたね。頑張れ!

投稿: Ken | 2011年3月 6日 (日) 16:24

もう、卒業式の時期でしたか!
早いものですねもう自分たちが卒業してから3年も経つんですね。新しい卒業生が先生のクラスから出るとなんか妬けてきます(^_^)ワラ
この高校は自分を見つめ直せる原点なような気がします。なんだか感慨深くなっちゃいますね。

投稿: ゆうち | 2011年3月 4日 (金) 01:56

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